華僑の墓参り

私は3年前、瓊林地区にできたての民宿、序室に宿泊した。(後に撮影の際はタエの家主の家として撮影)。翌朝、物音で目を覚ます。細い小道を隔てた廟から、祈りを捧げる人の気配がする。その翌日は、民宿の客間に相当する場所で、見知らぬ人々ががやがやと供物を並べて、祈りを捧げている。金門島の民宿は、いわゆる古民家を金門県政府の認可のもとに経営されていることが多い。序室の建物にも、本来の持ち主が存在する。家の持ち主はその多くが東南アジアへ移住しているため、祖先供養の日には一族で金門島へ戻ってくる。こうした光景はおそらく金門島の日常なのだろう。
傾く位牌
私はこの頃、ロケハンも兼ねて、てくてく金門を歩いた。この島には廃墟、廃屋があちこちにあるのだけれども、一様にしてその空間には、神棚と神像が存在している。
実は映画『妖怪、化物をひろう』で、余貴美子さんが演じるタエ婆さんの家(こちらも本来が空き家である)も、劇中で彼女が最後に辿り着く空き家も、撮影を許可する条件は、いずれも同じだった。「何をしても良いが、室内の神棚と神様を動かさないこと」である。
実際美術担当は撮影中、その言いつけを守っているので、位牌にしても本来の姿通り斜めに傾いたまま、さりげなく作品に収まっている。
−続く
